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GUIDE

美しきドームの下へ。メルボルンの州立ビクトリア図書館を訪ねて

メルボルンの中心部に位置する「州立ビクトリア図書館(State Library Victoria)」は、世界の美しい図書館としてたびたび紹介される、街を代表する歴史的建造物のひとつ。最大の見どころは、ドーム型の天井の下に机が放射状に並ぶ「ラ・トローブ・リーディングルーム」。整然と並ぶ木製の机と緑色のランプが織りなす光景は、まるで映画のワンシーンのようだ。

さらに、19世紀オーストラリアの伝説的人物ネッド・ケリーが、警察との最後の銃撃戦で着用した手作りの鉄製甲冑も展示されている。旧メルボルン監獄(Old Melbourne Gaol)を訪れたなら、ぜひあわせて見ておきたい。歴史的な建築を眺めるだけでなく、貴重な展示を鑑賞したり、実際に読書や仕事をしたりと、さまざまな過ごし方ができる。今回は、そんな州立ビクトリア図書館の魅力を紹介する。

170年以上の歴史を持つ、メルボルンの知の象徴

スワンストン・ストリートに面して建つ州立ビクトリア図書館。正面には大きな柱と三角形の破風が並び、古代ギリシャ・ローマ建築を思わせる新古典主義の外観が印象的だ。図書館の設立は1854年。ゴールドラッシュによってメルボルンが急速に発展していた時代に計画され、1856年に「メルボルン公共図書館」として開館した。オーストラリアで最も古い公立図書館として知られている。当時から、身分や経済状況にかかわらず学べる場所を目指していたことも特徴のひとつ。長い年月を経た現在も、市民や学生、観光客など、さまざまな人が自由に利用できる公共施設として親しまれている。

また、図書館の敷地には、かつて博物館やビクトリア国立美術館も置かれていた。そのため、建物は時代とともに増改築を重ね、現在の複雑で広大な構造へと発展してきた。館内には「Elephant Lift(エレファント・リフト)」と呼ばれる歴史ある大型エレベーターも残されている。かつて博物館と施設を共有していた時代に、ゾウの標本を運んだことが名前の由来ともいわれているが、実際の由来は定かではない。一般的な観光設備というより、建物の歴史を物語る興味深い存在だ。

建物の前に広がる芝生も、この図書館ならではの風景。晴れた日には芝生に寝転んでくつろぐ人や、友人同士で会話を楽しむ人の姿が見られる。大きなチェス盤を囲んで対局する人々の姿もあり、荘厳な建物とは対照的に、周囲にはどこかのびのびとした雰囲気が漂っている。観光名所でありながら、メルボルンの日常に自然と溶け込んでいる場所なのだ。

ドームの光に包まれる、ラ・トローブ・リーディングルーム

州立ビクトリア図書館を訪れる最大の目的といっても過言ではないのが、「La Trobe Reading Room(ラ・トローブ・リーディングルーム)」。1913年に完成した八角形の閲覧室で、高さ約35mの巨大なドーム天井が広がっている。完成当時は、世界最大級の鉄筋コンクリート製ドームとして注目されたという。中央から放射状に配置された木製の机には、クラシカルな緑色のランプがずらり。高い天井から自然光が差し込み、静かな空間に柔らかな明るさをもたらしている。

この美しい光景を写真に収めるなら、上階のギャラリーから見下ろすのがおすすめだ。机の配置や八角形の建築構造を一望でき、閲覧室の美しさをより実感できる。ただし、上階の見学可能エリアは展示や施設の運営状況によって変わる。訪問時に開放されている階を確認しておこう。

そして、ここは観光客のためだけの空間ではない。現在も実際の閲覧室として使われており、机に向かって読書や勉強をする人々の姿がある。館内には無料Wi-Fiも完備。時間に余裕があれば、旅の記録をまとめたり、パソコンを開いて少し仕事をしたりするのも面白いかもしれない。100年以上の歴史を持つ空間で過ごす時間は、普段の作業とはまた違った特別な体験になるはずだ。なお、写真撮影を楽しむ際も、ここが静かに学ぶための場所であることを忘れずに。大きな声で話したり、利用者の邪魔になったりしないよう配慮したい。

ネッド・ケリーが実際に着用した、鉄製甲冑の実物を展示

もうひとつ見逃せないのが、オーストラリア史にその名を残すネッド・ケリー(Ned Kelly)の甲冑だ。ネッド・ケリーは、19世紀後半に活動した「ブッシュレンジャー」と呼ばれる無法者のひとり。仲間とともに銀行強盗などを繰り返し、警察官3人の殺害にも関与した人物として知られる。一方で、貧しいアイルランド系移民の家庭に生まれ、警察による不当な扱いに反発したとされる背景から、権力に立ち向かった反逆者として語られることもある。現在でも、英雄か犯罪者か、その評価が分かれる存在だ。

1880年6月、ビクトリア州グレンローワンで警察と最後の銃撃戦を繰り広げた際、ケリーは仲間とともに製作した鉄製の甲冑を着用していた。農具の鋼鉄を加工して作られた甲冑は、重量約45kg。頭部や胸部を銃弾から守る一方、脚は覆われていなかったため、ケリーは脚を撃たれて逮捕された。その後、1880年11月11日に旧メルボルン監獄で絞首刑に処された。

図書館の「Redmond Barry Reading Room(レドモンド・バリー・リーディングルーム)」には、この最後の銃撃戦でケリー本人が着用した甲冑の実物が展示されている。特に注目したいのが、鉄板に残された銃弾の痕跡だ。ヘルメットのひさしには、警察のライフル弾が命中した跡も確認できる。約150年前の銃撃戦を物語る生々しい痕跡を、ぜひ間近で観察してほしい。

また、ケリーが自らの行動や警察への不満を語った長文の書簡「ジェリルデリー・レター(Jerilderie Letter)」も、図書館が所蔵する重要な歴史資料のひとつだ。旧メルボルン監獄で処刑の歴史に触れたあと、図書館で実際の甲冑を見る。二つの場所を訪れることで、ネッド・ケリーという人物と、当時のオーストラリア社会への理解がより深まるだろう。

図書館の中には、美術館のような展示スペースも

州立ビクトリア図書館の魅力は、閲覧室や歴史的な建築だけではない。館内には複数のギャラリーがあり、美術作品や貴重な歴史資料を鑑賞することもできる。例えば「Cowen Gallery(コーウェン・ギャラリー)」では、図書館が所蔵する絵画や肖像画、風景画などを展示。メルボルンの街の発展や、ビクトリア州の自然と歴史をテーマにした作品が並んでいる。かつてビクトリア国立美術館が使用していた空間でもあり、図書館の中にいながら、美術館を訪れたような気分を味わえる場所だ。

また、「Victoria Gallery(ビクトリア・ギャラリー)」では、写真や歴史、文化などをテーマにした企画展を開催。展示内容は定期的に入れ替わるため、訪れる時期によって異なる作品に出会える。さらに、ドーム周辺のギャラリーでは、希少な書籍や古文書などを紹介する「World of the Book」も開催されている。2026年の展示では、ジェーン・オースティンやヴァージニア・ウルフといった女性作家に焦点を当てながら、約4,000年前から現代までの貴重な資料400点以上を紹介。書籍の歴史だけでなく、装丁や印刷技術、芸術としての本の魅力にも触れられる。こうした展示の多くは無料で楽しめるのもうれしいポイント。閲覧室を見学したあと、興味のあるギャラリーにも立ち寄ってみよう。

美しい建築と歴史に出会う、メルボルンの特別な場所

州立ビクトリア図書館は、ただ本を読むためだけの場所ではない。100年以上の歴史を持つドーム型の閲覧室、ネッド・ケリーの甲冑、貴重な書籍や美術作品。館内を巡ることで、メルボルンの文化と歴史に触れることができる。

一方で、芝生でくつろぐ人々や、静かに机に向かう学生たちの姿からは、今も市民の生活に根づいた図書館であることが伝わってくる。見どころを中心に巡るなら、所要時間は1〜2時間ほど。旧メルボルン監獄からも徒歩圏内なので、歴史をテーマにした街歩きのコースに組み込むのもおすすめだ。観光の合間に、少しだけ静かな時間を過ごしてみてはいかがだろうか。

INFORMATION|State Library Victoria

施設名: 州立ビクトリア図書館(State Library Victoria)

住所: 328 Swanston Street, Melbourne VIC 3000, Australia

アクセス: メルボルンCBD内。Melbourne Central駅から徒歩すぐ。スワンストン・ストリートを走るトラムでもアクセス可能

開館時間: 毎日10:00〜18:00

休館日: 元日、グッドフライデー、クリスマス、ボクシングデー(12月26日)

入館料: 無料。一部のイベントや特別プログラムは有料の場合あり

主な見どころ: ラ・トローブ・リーディングルーム、ネッド・ケリーの甲冑、コーウェン・ギャラリー、ビクトリア・ギャラリー

所要時間の目安: 約1〜2時間

設備: 無料Wi-Fi、閲覧・学習スペース、カフェ、ショップなど

公式サイト: https://www.slv.vic.gov.au/